この記事では、看取りを考える上で大切な『延命治療』について解説します。
延命治療とは?
三大延命治療とされているのは
人工呼吸器、人工透析、人工栄養です。
人工呼吸器
人工呼吸器は自分で呼吸をすることが難しくなった場合に
機械を使って人工的に呼吸を維持することができます。
口を通して気管内に管を入れたり、喉の辺りに穴を開けて人工呼吸器を装着します。
人工透析
人工透析(透析療法)とは、腎臓の働きを人工的に補う治療法です。
病気などの影響で正常に機能しなくなった腎臓の代わりに、血液中のゴミや余分な水分を取り除きます。
人工栄養
何らかの理由で口から飲食できなくなった時に
消化管に栄養剤を流したり、点滴をすることで
生命維持に必要な栄養を確保することをいいます。
人工栄養の中にもいくつか方法があります。
胃ろう・腸ろう
胃や腸などにに穴を開け、チューブやカテーテルを使って栄養剤を直接消化管に注入します。
胃に穴を開ける場合は胃ろう、腸に穴を開ける場合は腸ろうといいます。
誤嚥などの危険性がなくなり、消化器官の働きを維持できるというメリットがあります。
経鼻栄養
鼻の穴から管を入れて胃に栄養剤を注入します。
胃ろう・腸ろうと違い、お腹から消化管に穴を開ける手術は必要ない反面、誤嚥のリスクが高くなります。
経静脈栄養(点滴)
静脈の血管に栄養を投与する方法です。
経管栄養と違って腸などの消化管機能が低下している
もしくは機能していない場合でも栄養を摂取することができます。
延命治療を考える上で大切なこと
①本人の意思を尊重する
一番大切なことは『本人の意思を尊重すること』です。
希望しない延命となってしまうこともあるため、意思がハッキリ伝えられるうちに話し合っていきましょう。
②家族で話し合う
一番大切なのは本人の意思ですが、家族の意見も大切にしましょう。
『看取り』を考える上で、介護者の協力は不可欠です。
本人の意思を叶えるために無理をして、介護者が先に倒れてしまうことにならないよう
本人の意思と家族の意思を確認して話し合うことが大切です。
③看取りの場所もセットで考える
施設では、胃ろうは入所可能でも
経鼻栄養(鼻から管を入れての栄養投与)は、入所受け入れできない場合があります。
施設によって入所条件は違うので確認しておきましょう。
在宅では、点滴・経管栄養などを誰がやるのか?ということも考えていく必要があります。
このように、看取りの場所もセットで考えないと『こんなはずではなかった…』という結果に繋がってしまう場合があります。
『延命治療をどこまで望むか』と『看取りの場所』はセットで考えていくことをおすすめします。
延命治療に関連した事件
延命治療について考えさせられる事件です。
弔問に訪れた医師が散弾銃で殺害された事件があります。
殺人の罪で逮捕された容疑者は、92歳の母親と2人で暮らしていました。
母親は食事を摂取することが困難なため、容疑者は胃ろう造設を希望しましたが、
医師は胃ろうの造設に賛成しませんでした。
その後、母親が亡くなった後に医師など7人を呼び出し、散弾銃で立て続けに襲ったという事件です。
今後の治療方針をめぐり、容疑者と医師との間で、意見の食い違いがあったことから今回の事件に繋がったのではないかと考えられています。
『治療』と『延命』の難しさ
どこまでを『治療』として
どこからを『延命』とするか
『治療』から『延命』に
変わることがあります。
抹消点滴を例に挙げると
一時的に点滴を実施し、状態が改善する見込みがあれば『治療』
今後も口から栄養・水分を摂取することが難しいだろうという場合に、点滴を続けていくことは『延命』
と考えられますが
食事量が低下し、脱水傾向で活気もない。
点滴を実施することで意識状態の改善は見られたが、
食事・水分を口から摂取することは困難なため、点滴は継続となった。
という場合
点滴による脱水の『治療』をしたが、経口摂取ができないため
『延命』のための点滴となってしまっています。
本人が自然な最期を希望していたとしても
この状況で家族が点滴をやめるという選択をすることは難しいと思います。
『最期』を考える上で正解はありません。
本人・家族・ケアマネージャー・医療スタッフと納得がいくまで考えていくことが大切です。
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